2026.05.26

あかね幼児園 屋内運動場
「木造建築」と聞くと、住宅や小さな建物を思い浮かべる方が多いかもしれません。
また、公共施設のように多くの人が利用する建物では、
「木は燃えやすいのではないか」「地震のときに大丈夫なのか」といった不安を持たれることもあります。
しかし近年では、構造設計や耐火設計の技術が進み、保育園、こども園、集会施設、交流施設など、
さまざまな公共建築で木造が採用されるようになっています。
木造建築は、安全性を確保しながら、木ならではの温かさや、地域の木材を活かした親しみやすい空間をつくることができます。

燃え代梁を採用した室内空間
木は「燃える」からこそ、考えられた安全設計
木材は確かに燃える材料です。
だからこそ、建築ではその性質を理解したうえで、安全に使うためのさまざまな工夫が
行われています。
たとえば「燃え代設計」という考え方があります。火災時に木材の表面が炭化しても、
内側に残る部分で建物を支えられるように、あらかじめ構造計算を行う設計方法です。
木材を不燃材料で覆うだけでなく、木の表情を見せながら安全性を確保することも可能
になります。
また、建物の用途や規模、使用する場所によっては、内装制限に対応するために木材へ
不燃加工を施すこともあります。
燃えにくい性能を持たせることで、木の質感を活かしながら、法的な制限のある場所に
も木材を使用できる場合があります。

地域材を活用し不燃加工を施した腰壁
大きな空間を支える木の構造技術
木造でホールやレクチャールームのような大きな空間をつくるには、構造的な工夫が必要です。
その方法の一つが「大断面集成材」です。小さな木材を組み合わせて大きな柱や梁をつくることで、
広い空間を支える強い構造フレームを構成できます。木造でありながら、開放感のある空間をつくる
ことができるのが特徴です。
もう一つの方法として「木材トラス」があります。部材を三角形に組み合わせることで力を効率よく
伝える構造で、比較的小さな断面の木材でも大空間を支えることができます。
一般に流通している木材を活用しやすく、地域の大工さんや職人さんにも施工しやすい工法です。

大断面集成材の木造ラーメン構造

大空間を支える木造張弦トラス
仕上げ材としての木の魅力
木材は、柱や梁といった構造材だけでなく、床、壁、天井などの仕上げ材としても幅広く活用できます。
無垢フローリングは、木の素材感や足ざわりの良さが魅力です。
歩いたときのやわらかさや、時間とともに深まる風合いは、木材ならではのものです。
また、用途に応じて耐久性やメンテナンス性に配慮した複合フローリングを選ぶこともできます。
壁や天井には、羽目板として木材を用いることもあります。
木目が空間にやわらかな表情を与え、施設を利用する人に落ち着きや安心感をもたらします。
特に子どもたちが過ごす施設や、地域の方々が集まる場所では、木の温かみが空間の印象を大きく高めてくれます。

地域材を活用した温かみのある床材

地域材を活用した風合い豊かな天井仕上

びわ湖材の構造用合板
地域の木を使うということ
滋賀県では、地域材である「びわ湖材」の活用も進んでいます。
柱や梁などの構造材だけでなく、間柱やまぐさといった下地材、構造用合板など、
建物のさまざまな部分に地域の木材を使うことができます。
地域の木を使うことは、単に材料を選ぶということだけではありません。
地元の森林を守り、地域の産業を支え、建物に地域らしさを生み出すことにもつながります。
公共建築に地域材を取り入れることは、その建物が地域の人々に長く親しまれるための大切な
要素の一つだと考えています。
これからの公共建築に求められる木造
木造建築は、単に「木でつくる建物」ではありません。
安全性、快適性、環境への配慮、地域材の活用、そして人にやさしい空間づくりを同時に考えることができる建築です。
公共施設は、子どもから高齢者まで、さまざまな人が利用する場所です。
だからこそ、安心して過ごせることはもちろん、居心地のよさや、地域に愛される雰囲気も大切になります。
私たちはこれからも、建築基準法に基づいた確かな設計技術と、木材の特性を活かした空間づくりにより、
安心・安全で、地域に親しまれる木の公共建築を提案していきたいと考えています。